第4章 『事実』

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〔3〕                      丸山署を出たのは夕方近く。長い時間、建物の中にいたので気付かなかったが、日中はかなり暑かった事が時折吹く生暖かい風で感じ取れた。 「…(腹減ったなあ。沙也加ちゃんは今日も遅いだろうし……体も思いの外動く。世話になっているついでに晩飯作って待っているのも良いかも……)」 卓司は雑居ビルが立ち並ぶ通りを抜け、人通りの多い商店街へと足を向けた。                                                                                                                                      たくさんの買い物袋をぶら下げて玄関のドアを開け、中に入る。 締め切った部屋はサウナのようで荷物を上がり口に置き、直ぐ様、エアコンとテレビのスイッチを入れる。 戻って荷物を台所に運ぼうと屈(かが)み込んだ時に例のヒールの事を思い出す。 「…(疑っているようで気が引けるけど念の為……)」 靴箱を覗くがヒールが無い。あちこち探してみたが、やはり無い。 「…(あれっ、おかしいなあ。沙也加ちゃん、履いてったのかな……でも、玄関には白いヒールもないし……まっ、帰って来たら聞けばいいか)」 台所に荷物を運んで早速、夕食の準備に取り掛かる。                                                                                        「…(さすがに疲れた)」 夕食の準備を一通り終え、リビングに戻って来てテレビに目を遣(や)る。丁度、夜7時のニュースが始まるところであった。
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