第4章 『事実』

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「それでね、そろそろ東京に戻ろうかと思うんだ」 「え~~っ、いつ?」 「明後日…」 「折角仲良くなれたのに」 「でも、狭い日本だから会おうと思えばいつでも会えるよ」 「それもそうよね」 「今度の事、本格的に調べたいし……」 「何を?」 「なぜ俺が襲われて、書類が盗まれたのか? そして、黒部という依頼人の事も……」 「手掛かりはあるの?」 「全くのゼロ。でも、警察や検事にも知り合いはいるから、そっちから当たっていこうかと思っているんだ」 「持つべき物は友。この場合はちょと違う?」 「ははははっ、残念ながらちょと違う……そうそう、沙也加ちゃん、赤いハイヒール持ってるよね?」 卓司の問いに沙也加は少し怪訝(けげん)そうな顔をする。 「赤いハイヒール?……どんなの?」 「この前、靴箱で見たんだけど、踵(かかと)にリボンか蝶が付いているようなやつ……」 「あたしは、そういった種類のハイヒールは持ってないよ」 「えっ、本当 !? 確かにあったと思ったんだけどな」 「それがどうかしたの?」 「ちょっと気になって……」 「タッキー、見間違えたんじゃない?」 「そうかなあ」 「きっとそうだって。それより明日は送別会やろうね。それと後で携番とメルアドも交換してよね」 「うん……(見間違いだったんだろうか、確かにあった筈だが……)」 卓司は困惑を深め、疑心暗鬼に沙也加の顔を眺める。
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