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〔2〕
所持金も底を突きそうだったので各駅停車や急行など特別料金が掛からない電車を乗り継いで、福島の郡山駅に着いたのは午後8時辺り。
「…(ここから各停を乗り継ぐと多分、今日中には東京に着かないぞ……残り2万5千円か。新幹線だと約9千円……どうする、茂に借りるか……だが、あいつも公務員だから金ないだろうしな……)」
卓司は自動券売機を前にして悩んでいたが、結局は新幹線の特急券と乗車券を購入する事にする。
「…(なるようにしかならないさ)」
郡山発20:30の新幹線に乗り込む。東京に着いたのは午後10時近くであった。
卓司のマンションというか、アパートは目黒区の中目黒という所にあった。東京駅から在来線を3本乗り継いで自宅に戻ったのは午前0時近く、右手にコンビニで買って来た弁当と飲み物が入った袋を持って歩いていた。
「…(1週間ぶりだ)」
1階の郵便ポストに溜まった郵便物を左手に持ち、外付けの鉄製の階段を上って、2階の角部屋のドア前に立つ。そして、鍵を取り出し鍵穴に差し込む、が……
「…(あれっ、鍵が開いている。閉め忘れたかな)」
札幌での事もあるので用心しながら『そーーっ』とドアを開ける。
注意深く覗くが真っ暗な狭い部屋には人の気配はない。
靴を脱いで部屋に入り電気を点け、目にした物は……
何もない、ガラ~ンとした部屋。
「…(なんだこれは !? ただの泥棒じゃないぞ !!)」
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