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最初からそれ程家具がある部屋ではなかったが、その家具類は全て消えていた。電話は勿論、電話線すらない。
だが驚くべき事はそれだけではなく、壁や床、天井までもが新しい物に変わっている。そして、台所、トイレ、浴槽も新品になっていた。
「…(これって普通は前に住んでいた人が引っ越した後にする内装の張り替え。って事は俺は引っ越したの? どこに?……それより、俺、大家さんに『出てけ』って言われてないし…)」
よく見ると、室内の照明器具も変わっている。
「…(でも、なぜ照明器具だけは残してあるんだ?)」
『グウーーッ !!』
「…(昼から飯食ってない)」
卓司はガラ~~ンとした部屋の真ん中にあぐらを掻き、買って来た弁当を食い始める。それとともに、溜まっていた郵便物に目を通す。
「…(殆どが請求書とダイレクトメールか……あれっ?)」
その中に1通、見た事もないやや大きめな白い封書が混じっている。
「…(何だろう?)」
首を傾げながら封書の裏の差出人を見る。
『横浜市港北区……白亜の森』
「…(白亜の森?……知らないなあ……)」
それから、封を切って中を見る。
『突然のお便り申し訳ございません。白亜の森は地球の平和と自然の保護を目的として設立されたボランティア団体です。
昨今の世界各地で起こっている、内紛、内線、戦争は未来の地球にとって憂慮すべき事態であり、引いてはそれが自然環境に及ぼす影響は計り知れないものがあります。
そこで皆様の参加と一口5千円の募金をお願いしたい次第であります。
白亜の森 代表 森脇 和巳(かずみ)』
「…(なあんだ、募金か)」
卓司はそれを他の郵便物と一緒にし、丸めて部屋の隅の方に投げ捨てる。
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