第5章 『取り調べ』

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〔3〕          コンビニで充電器を買い、部屋に戻って携帯を復活させる。高見の家に行こうかと思ったが、全財産が1万円では香典で終わってしまう。 「…(麻衣子が落ち着いてからでも良いかな)」 自分の周りに起こっている奇妙な現象は少なからずとも黒部と接触してからだが、黒部の情報が何もない。 あのホームレスの人を探して話を聞こうとも考えたが、顔を余り覚えてないし、この炎天下の中、彷徨(さまよ)い歩く気力もなかった。 部屋の物が無くなっていた事を警察に届けるかどうかも考えた。だが、窃盗だし、警察も本気で取り組まないだろうと考えて、取り敢えず、中央署に行く事にした。 ネットで中央署の電話番号を調べ、中央署に電話して所在地を確認する。 「…(横浜かあ、遠いよな)」 東京の渋谷から神奈川県の横浜を結んでいる『東横線』の中目黒駅から電車に乗る。夏休みの午前中、しかも、横浜方面行きという事で車内は余裕の『ガラガラ』状態であった。 「…(涼しい~っ !!)」 そして、冷房の良く効いた車内は寝苦しい夜を過ごした卓司にとっては夏の軽井沢の朝のように爽やかであった。                                                                   『横浜、間もなく横浜です。どなた様も……』 車内アナウンスで目が覚める。いつの間にか眠ったらしい。車内には乗客が増えており、横浜では多くの乗客が降りて行った。 「…(寝ちゃったか。もう少し行くと横浜地裁かぁ、懐かしい)」 横浜駅から2つ目の『みなとみらい』駅で下車し、改札口付近にいた駅員に中央署の行き方を聞いて外に出る。 駅から徒歩で15分、くすんだ煉瓦造りの建物が見えて来た。
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