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1階で事情を話すと、直ぐに3人の刑事が表れる。ひとりは斎藤と言って、50代のベテランの刑事、もうひとりは鈴本という30代の刑事、そして、最後のひとりは与田という20代の若い刑事であった。
卓司は3人の刑事に取り囲まれるような格好で2階にある取調室に連行される。
「今日はわざわざ遠いところからありがとうございました」
斎藤がまず、軽い挨拶から始めて話の口火を切る。
「事情は伺っております。紺野さんは参考人ですからいつでも自由に退室できます、って、法律の専門家ですからその辺は私より詳しいですよね」
「元ですけど…」
「それから念の為に調書を取ります。最後に、右手の人差し指の指紋押捺と名前の記入をお願いします」
「分かりました」
斎藤が卓司の正面にあるパイプ椅子に腰を下ろし、鈴本がその左脇に立つ。そして、与田は入り口付近の小さなデスクで調書を取る準備に入る。
「では、始めます。最後に高見さんに会ったのはいつですか」
「確か、高見が死ぬ1週間前だったと思います」
「その時、変わった様子はありませんでしたか」
「いえ、ありませんでした。ただ……」
「ただ、何です?」
「これは高見の事件とは直接関係ないので…」
「一応、話してくれませんか」
厳つい風貌に似合わず、斎藤の声は穏やかで、卓司もそれほど威圧感は感じなかった
「それじゃあ……私はその日、かなり酒を飲んだらしく途中から記憶がなくなって、朝、目覚めたらホテルの一室にいました」
「高見さんは?」
「私を看護する為、ツインの部屋を取ってくれたみたいで、隣のベッドで寝てました」
「自力で帰れない程飲んだのですか」
「私は下戸で余り酒を飲まないのですが、その日は高見のスクープのお祝いという事で、そこそこは飲みました」
「何というホテルか覚えてますか」
「確か、新橋の『スカイホテル』だったと思います」
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