第5章 『取り調べ』

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「実は、先程言った、ひったくりに遭った際に、後頭部を強く殴らて、その後、一時記憶を失ったみたいで……それで、連絡を取らずにいました」 「ふ~~ん、記憶がねぇ……それじゃ、病院とかに入院してたのですか」 卓司の返答が斎藤にはどうやら胡散臭く感じられるようであった。 「いえ、親切な女性に助けられてその人の看護を受けてました」 その時、ドアが開いて鈴本が戻って来て、そのまま斎藤に耳打ちをする。 「……被害届けの件は確認しました……話の続きですが、記憶喪失のような重病で病院に行かなかった?」 「いえ、その女性が医者を呼んでくれました」 「という事は、診断書があるんですね?」 「…(沈黙はまずい、まずいが真実を話してもいいのか)」 「どうしました?」 卓司の沈黙は何か後ろめたい事があるからだろうと、斎藤は強い口調で問い質す。 「……その女性というのが『水商売』関係の人で、呼んでくれた医者が裏関係の医者でして……」 「という事は、無免許の医者、ですか」 「はい…」 「じゃ、当然、診断書もない?」 卓司はマズイと思いつつも頷くしかなかった。 「紺野さん、ここまでの話を聞いていますと、どうも真実味が全く無い、というよりは作り話に聞こえるんですよ」 「でも、札幌にいた事は事実です」 「それは分かっています。でもねぇ、紺野さんの話を総合するとですねぇ、仕事で札幌に行くが、その日のうちにひったくりに遭って怪我をする。そして、その4日後に高見さんの死に気付く。 そして、その4日間は記憶を失っていたと言うのですが、それを証明するものが無いんですよ。その間に高見さんが死んでいる。 これをアリバイが無いと言うんじゃないんですか」 「……アリバイならあります !!」
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