第19章 『究明』

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「それは何?」 卓司の問いに坂本が人の目を憚(はばか)るように辺りを窺(うかが)う。それから、卓司の左耳に顔を近づけ、両手で口を覆うようにして呟(つぶや)く。 「…(核武装です)」 その言葉に卓司の思考は停止する。あり得ないからだ。日本では『天皇』についてはタブー視されているが、この『核武装』も同様である。 「それ、本当?」 立ち止まって大きく見開いた目で坂本を見据(みす)える。 「いえ、確固たる証拠がある訳ではないので、あくまで私の推測ですけど……」 「いや、合田ならやりかねないと思う」 そして、他の歩行者の邪魔になっている事に気付いた2人はまた歩き出す。 「……私は、最近になって高見先輩が良く言っていた言葉を思い出すんですよ」 「どんな?」 「近い将来、日本は必ず戦争をする、っていう言葉です」 「高見がそんな事を言ってたんだ?」 「これは高見先輩の受け売りなんですけど、第1次世界大戦後、戦争という悲惨な出来事は決して起こしてはならないという目的で作られたのが『国際連盟』です。でも、直ぐ第2次世界大戦が起きます。それで、権限を強化した『国際連合』が作られました。 それなのに、戦争はなくなっていない。今日まで世界各地で内紛や内戦、戦争という物がどれくらい起きているかご存じですか」 卓司は歩みを緩めて考える。坂本の言う通り、確かに、太平洋戦争敗戦後も世界のどこかで戦争は起きて来た。朝鮮戦争、ベトナム戦争、フォークランド紛争、湾岸戦争然り。 「……100ぐらい?」 「400以上です」 「えーーっ、そんなに?」 「はい。幸いな事に核の抑止力が働いてますから、今のところは世界規模の戦争には発展していませんけど……」
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