第18章  ラブ・バレンタイン

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そんな夜を過ごしたせいではなかろうが、 翌朝の彼は、いつもの彼に戻っていた。 お陰で、どうやらバースデー・デートのキャンセルと久々の出張に 気が重いのだろうと、私の中でも結論が出る。 そして、それが証拠の日曜の夕方。 「行ってらっしゃい」 出張準備をした彼を玄関まで見送りに出ると、 靴を履き「行ってきます」と言って、ふっと振り返る。 そして「ん?」と言った私を、やおら荷物を置いて抱きしめた。 「香奈、寂しい?」 寂しいのは私よりも、彼の方なのは明らか。 しかも、なんだか学生時代の恋人みたいな事を言われて ちょっとこそばゆい。 そう思いつつも、一応頷いてみた。
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