第18章  ラブ・バレンタイン

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「うん。でも、来週はご馳走作って待ってるからね」 うん――。 頷いたものの、なかなか腕を解こうとはしない。 だから「衛、顔見せて?」と、こちらから促した。 そして、のっそりと腕を解いた彼の顔をそっと両手で包み ゆっくりとキスをする。 「お仕事がんばって」 それに「うん」と、もう一度うなずいた彼が、 再び荷物を手に取り、力なく言う。 「行ってきます」 「行ってらっしゃい」 そして私は、寂しげに出て行く彼を、出来る限りの大きな笑顔で見送った。
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