第1章

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そして……その合間に時折聞こえるチュッ…、チュッ…、という音。 部長に抱き締められて眠るという状況による緊張もあったが、それよりもこの音が気になって私は眠れないでいた。 振り返ってはいけない気がしたけれど、部長は熟睡しているようだし、ゆっくりと体ごと部長の方を向く。 間接証明にぼんやりと照らされて、健やかに眠る部長の端正な顔。 そして…、その口…に、……おしゃぶり……。 音で少しだけ予想はしていた。 けれど、口元にそれがないことを願いながら振り返った。 残念ながら、予感は現実だった。 ぬいぐるみで取り乱す姿は、子供じゃあるまいしと思いながらも、どこか可愛く思えたものだったけれど、おしゃぶりは……。 私の中で色々なものが崩壊していく音がした。 部長のことだ、これにも理由があるんだろうし、完璧な人間にだって欠点の一つや二つ……などと自分で自分を納得させようとしたけれど、受け入れがたい現実を目の前に、意識が遠退くのと同時に睡魔がやってきて瞼が落ちた。
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