第1章

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私は、明日の商談に備え、会社の上司と共に出張先近くの温泉地にあるホテルを訪れた。 当初予約していたのは安いビジネスホテルのだった。 しかし、高速で渋滞にハマり、チェックイン時間に間に合わないのを見越してビジネスホテルをキャンセルし上司の知り合いが経営するこのホテルに泊めてもらうことになったのだ。 その上司というのは、今フロントでチェックインをしているすらりとした長身の男性、高崎涼(たかさき りょう)部長。27歳で私と3つしか変わらないけれど、仕事が出来る上に気さくで人当たりが良いので、上司からも部下からも一目置かれている人だ。 おまけに、顔立ちまで整っているのだから、女性社員の間ではファンクラブの様なものまであるのだとか。 「はい、これ香西の部屋のキーな。」 いつの間にかチェックインを済ませた高崎部長が優しく微笑みながらカードキーを渡してくれた。 ファンではない私でも思わず見とれて、キーを受けとるまでに不自然な間ができてしまった。
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