第1章

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「店、どこも閉まってて……。」 部長は私の問いには答えず、そう呟いた。 私たちがホテルに着いたのは9時少し前。 田舎の店は閉まるのが早いと聞くから、きっと閉店時間を過ぎてしまっていたのだろう。 気の毒だけれど、姪っ子のおみやげが買えなかったくらいでそんなに落ち込まなくても…、と思うと同時に、普段仕事も人付き合いも完璧な部長がそんなことで悄気ているのは何だか可愛く見えた。 「部長、姪っ子ちゃん思いなんですね~。明日の商談は夕方までには終わりますし、帰りにどこか寄りましょう!!」 目一杯励ましたつもりが、部長の顔は益々曇っていった。
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