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「違うんだ。」
「違う?」
私の問いに対して、部長はまたこくりと頷いた。
「…ぬいぐるみ……、自分のなんだ……。」
部長はとても決まり悪気にそう言った。
私の頭上には、大きなハテナマークが浮かんでいたことだろう。
「…え?何故?」
混乱するあまり、つい口から零れた言葉に、暫く部屋が静まり返った。
備え付けの時計の秒針の音が変に大きく響く。
聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうかという気まずさで、焦って余計言葉が出てこない。
「…お、大きなぬいぐるみが無いと眠れないんだ!!」
部長は突然意を決したようにそう叫ぶと、私が呆気にとられているうちに矢継ぎ早に話を進めた。
「小さい頃から母親が大きなうさぎのぬいぐるみを俺のベッドに置いていて、それに抱きついて眠るのが当たり前で育ったんだ…。そのせいで、ぬいぐるみがないと眠れなくなるんだ。人にはこんな欠点言えないから、姪っ子にお土産なんて嘘までついて……。」
部長の顔は真っ赤だった。
しかし、全部言いきったことで少し落ち着いたのか、先程までのしょんぼりとして泣きだしそうな感じはなくなっていた。
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