第1章

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「部屋で布団や枕に抱きついてみたりもしたんだが、どうにも眠れなくて、眠れないと明日の商談失敗したらどうしようとか不安で仕方なくなってきて…、うまく眠れるアドバイスでももらえないかと君の部屋を訪ねた。しかし、恥ずかしいやら情けないやらでどう切り出して良いのか分からず……手間を取らせてしまい、すまない!!」 高崎部長は上司や取引先に対しても怯まず意見することから、ハートの強い人だというイメージだったけれど、実際はそれに反して、とても繊細なお方だったらしい。 「眠れる方法、ですか。…うーん……枕にバスタオル巻いて抱きついてみるとかどうですか?少しはぬいぐるみに質感似るかも!!」 パッと思い付いた割りには名案じゃないか、と思ったんだけど……。 「うちのぬいぐるみはタオルよりもっとふわふわもこもこで、ここのふにゃふにゃの枕と違って弾力のある柔らかさなんだ。」 バッサリ却下された。 全部暴露したことで胸の支えがとれたのか、段々といつもの調子は取り戻しつつあるらしい。 「他に使えそうなもの……。」 部屋中をぐるりと見渡すが、部長のぬいぐるみに質感の近そうなものは見当たらない。 「残念ですけど…、これといったものは無さそうですね……。」 一周見終わって部長に視線を戻すと、部長の目はじっと私を見ていた。 「えっ。な、何でしょう?……って、えぇっ!?」
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