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「久しぶり」
そして、数年前と変わらない、ちょっとレトロな椅子を引いて向かい合い、
「本当に。元気だった?」
お互い気さくに声を掛けあい、極普通の挨拶が交わされる。
しかし、いざ注文を終え、本題に入った彼の言葉を聞いて
私は、いささか戸惑った。
「実はね、良ければ、香奈に頼みたい案件があってね」
「えっ?」
一瞬、声を呑んだ私は、「仕事ってこと?」と聞き返す。
それに彼は、あっさりと頷いてきた。
「実は、知人の家族が、今、住んでいる家を壊して
住居ビルとして建て直して、一部は賃貸にしたいらしくてね。
本当は、俺が頼まれたんだけど、今、ちょっと手が回らないし、
何より俺は、住宅系のビルはあまり得意じゃないから……」
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