ざれごとたち

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13 彼は13発の弾丸を浴びて死んだという うち何発が彼の身体を貫いたのだろうか 何発目で死んだのだろうか 痛かっただろうか それとも あっという間だったか 想像の余地は有り余る 彼を撃ったのは見知らぬ人間で けれどそれを連れてきたのは彼の家族で もっとも彼は、奴を家族と思ったこともないが いつしか希少価値のついた同種の仲間だけが彼の家族で けれども誰も 彼の家族を知らなかった 彼は13発の弾丸を浴びて死んだという 彼の死の後で 彼とはなんの関係もない人間が 彼のことを思ってか それとも自分の価値感を守ってか 声を荒げて叫んだという 彼の見掛け倒しの家族は 彼に謝っただろうか それともほっと息をついただろうか 彼を撃った見ず知らずの人間は 他にも命を奪ったことがあっただろうか 罵倒の大海原に投げ出された身では 食えない命は不要と捨てたか 彼は13発の弾丸を浴びて死んだという 銃口を向けられた時 彼はどんな気持ちだっただろうか それが何かわかっていただろうか 先祖代々の掟を破ってまで 見掛け倒しの家族に咬みついた それほど祖先の血が強かったのだろうか 彼は本当の家族に会いたかったのかもしれない だから祖先の血に従ったのかもしれない 見掛け倒しの家族ではなく 本当の家族に 会いたかったのかもしれない 今じゃ天然記念物などと称される 彼らは『他』に属さなければ生きていかれない 自分の先祖代々の血よりも 掟を優先して生きることを選んだからには 見掛け倒しの家族にも頭(こうべ)を垂れなければならない それが嫌だったのかもしれない 彼は13発の弾丸を浴びて死んだという 彼は13発の弾丸を浴びせて殺したという 彼は何が嫌だったのだろうか。 .
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