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昼休み。
俺は購買で買ってきたパンを片手に、足早に屋上へと向かっていた。
『明日、早速屋上でお昼を食べよう♪』
昨日の事件以降、周りにもみくちゃにされたせいで結局最上先輩とはお話しできなかったが、どこからか手に入れたのであろう俺のLINEにこんなメッセージが届いたもんだから、教室から購買経由の屋上ダッシュも全く苦にはならなかった。
屋上への扉にたどり着き、一呼吸整えてから扉を開く。
ふわっと、クチナシの甘い香りがした。
「おっ、待ってたぞ~カレシ君!」
昨日から俺の彼女になった、『完璧美少女』最上みれいがそこにいた。
ああ、やばい、眩しいっ! 眩しくて直視できないっ!
「なにしてるの? さあはやく、ゴハン食べよ?」
「す、すみません!」
最上先輩は屋上い設置されたベンチに腰をかける。
座っているだけなのに、なんだか神々しさを感じるな。
「ほら、座って座って!」
ドキドキで胸が張り裂けそうになりながら、俺も先輩の隣に腰を下ろす。
先輩は、少しだけ頬を紅潮させながら、俺に対面する。
「改めまして、最上みれいです。今日からよろしくね、清澄クン!」
「は、はい、よろしくお願いします……」
う、うおおおおお、な、名前で呼ばれちゃった! ヤバい! これ!
改めて、こんなかわいい最上先輩がなんで俺なんかの彼女になってくれたのかは疑問だが、もうそれは言うまい。
昨日、お昼の誘いがあったときにLINEでそれとなく理由を聞いてみたが、返信はこうだった。
『好きに理由が必要? 君のこと、なんかいいなって思った。それじゃ……ダメ?』
先輩のきれいな声で脳内再生されてしまって、これ以上この件を問い詰める気はきれいさっぱり無くなったのだ。
それよりも、先輩と二人っきりでお昼を楽しめるというこの状況を、目いっぱい楽しむんだ。
「あ、清澄くんはパンなんだ」
「え、ええ。うちは両親が共働きで朝早く出るもんで、たまに自分で作るんですけど、今日は時間がなかったもので」
本当は先輩の事を朝から考えててそれどころじゃなかったからなのだが、敢えて言うまい。
先輩はどこか伏し目がちに答えた俺にニコっと笑みを向け、かわいらしいブルーの弁当箱をふとももの上に乗せた。
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