麗しの女神様

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源五郎はカウンターの奥から、小皿に入れたミルクを持ってきて、カウンターのすぐ近くの床に置いた。 子猫は「ミー、ミー」と鳴いている。 涼は、華にも「飲食店なのにすみません」謝って、子猫をミルク皿に導いた。 華は無言のまま首を振る。 「ほら、ミルクだよ」 涼の声に子猫はミルクの匂いを嗅いでから、ぴちゃぴちゃと音を出しては飲み始めた。 小さなピンク色の舌でミルクを舐めている。 子猫の様子を見、涼は「良かった~」と床に座り込んだ。 「公園で見つけたのかい?」 アカネが聞くと、涼は頷く。 綺羅星から少し離れた場所に、小さな公園がある。 そのベンチに座って「動物、動物」と途方にくれていたところ、 ベンチの下から「ミー、ミー」と鳴き声が聞こえて、覗いてみるとダンボールに入った子猫が震えていたというわけだ。 涼は運命の女神というよりも、子猫のあまりの小ささと心許なさに、自らの懐に入れ、急いで綺羅星に戻っるつもりだったが、途中、道に迷い時間を潰してしまったらしい。 「大丈夫かな?」 「大丈夫でしょう」 涼の言葉に、アカネは言う。 「あれだけミルク飲んでるならね。もう少し小さかったら猫用ミルクが必要だったけどね」 「あれだけ小さいのに!」 「生命力が強い証拠さ」 言って、アカネは子猫のところまで来ると、ひょいと抱きあげ性別を確認した。 子猫は急にミルクから離されて「ミー、ミー」鳴いている。 「ごめんよ。さぁ、たんと召し上がれ」 子猫にそう言うと、言葉がわかるのか再びミルクを舐めはじめた。
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