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----9年後、春。
「……綺麗……」
街路樹に咲く
桜並木を見ながらそう呟く。
今年も周りの桜は
綺麗に満開に咲き乱れていて。
けれど
どんなに
綺麗な桜を見ても
心のどこかに
ポッカリと
穴が開いているような
物足りなさを感じてしまうのは
今も
あの日見た一本桜が
あまりにも綺麗で
記憶に色濃く残っているから---。
*
「おはようございます。」
「おはよう。今日も、篠宮ちゃんは元気だね。」
「はいっ、それが私の唯一の取り柄ですから!」
会社の顔とも称される
受付部署へと配属されて早2年。
今日も
会社の受付に立ち
行き交う社員や
来客の人へと笑顔で挨拶をする。
「……おはよぉ……」
「わっ!顔色悪いけど大丈夫ですか?」
「うん……。薬のんだから……もう少ししたら、いつもの私に戻る……。」
「……また、二日酔いですか?」
「……」
彼女は
私の
先輩でもある
福田咲(フクダ サキ)。
今日も彼女は
二日酔いで会社へとやって来た。
「で、いい男はいましたか?」
「……全然ダメ。雛子ちゃんが参加しないからイケメンのメンツ揃わなくて。」
咲先輩の
二日酔いの原因は
他の部との交流を
深めるという名ばかりの合コンのせいで。
なんでも
今の咲先輩は
恋に飢えてるらしく
毎晩のように合コンに出席していた。
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