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「桜・α・アリス姫、だと?」
マスカレィド先生も驚いていますね。
極東の姫君にして、極東異端審問官の最高司令官。
魔物駆逐の勲章を持つ戦姫。
眼前にいるのは極東でと十指に入る要注意人物、さらには王位継承において第一番目の王族だった。
液晶画面でしか見たことのない人物が、眼前に実在していた。
まだエルフの国にいた頃の貴族の礼法を思い出す。
男にならってナギとマスカレィドが最敬礼を行おうとすると、アリス姫は手を振って拒否した。
「ナギ・アルバニア殿とマスカレィド=エディンム殿、妾は無意味なことを好まぬ。」
瞳は静かだった。
「退屈な礼儀作法は不要だ。王族といっても、考えてみれば大昔に一番に暴れ狡猾だった賊の大将の末裔にすぎぬ。では無駄のない仕事の話しをせぬか。」
あげられた手に導かれ、ナギとマスカレィドは応接椅子に座る。
周囲には八人の護衛が控えているなか、戦姫と二人は向き合う。
いつの間にか下がっていた運転手の男が、紅茶用具一式が載った盆を持って戻っていた。
琥珀色の紅茶が、白い陶器にそそがれていく。
ナギは杯に手をつけない。
警戒するのは当たり前ですからね。
マスカレィド先生は………彼は彼なりに考えがあるのでしょう。
煙管をしまい、芳醇な香りを楽しむように、アリス姫が紅茶を口に含む。
「さて、家名で呼ぶ年寄りのカビの生えた習慣はやめて、名前でナギ殿、マスカレィド殿と呼ばせてもらおう。」
ナギは頷くだけにしておいた。
アリスが続ける。
「実はな、貴殿達二人に、妾の特務における街の案内と身辺警備を頼みたいのだ。今この瞬間から、な。」
「案内と警護、を今からですか?なぜですか?」
私とマスカレィド先生はこの極東の出身ではないのたけら案内は………
「幸いナギ殿は、この国で長い間旅をしていたそうな。公式非公式の履歴を見ても、戦士としての腕はかなり立つようでもあるな。」
戦姫が含みを持たせるように告げた。
「マスカレィド殿の武勲もよく聞いておるぞ。」
マスカレィドの兜から覗く瞳には疑念の光が宿っていた。
「我々よりも現地人である姫君がなぜ」
兜から声が漏れる。
「それに、いきなり護衛をしろでは、あまり愉快ではないな。」
おっと、マスカレィド先生。
某国の姫君になに文句垂れてるんですか?
ほらほら周囲の護衛達が怒気と殺気が溢れてますよ。
各自の武器に手を伸ばしている人がいますよ。
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