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「消しちゃえば?邪魔なら。」 病室の外で待っていた矢田君が耳元で囁いた。 私は驚いて矢田君の顔を見上げた。 「何を言ってるの?」 私がそう言うと、くるりと背を向けて、歌いだした。 「かーごめ、かごめー。かーごのなーかのとーりーはぁ。 いーついーつでーやーるー。」 私はその歌を聞いて、ゾクリとした。 「あなた、いったい何者なの?」 私が震える声で矢田君に聞くと、彼は振り返って言った。 「黄泉先案内人。」 そう言って笑った。 「君たちがあの世と言っている場所は、たとえば別の次元だと考えられない? 近年寿命が長くなりすぎて、あの世とこの世のバランスが崩れてきている。」 「何の話?」 「なんでもない。独り言。」 矢田クロード、何者なの?何故私の見た夢のことを知っているの? 単なる偶然? 次の日から私は学校に復帰したが、ひとみはいつまで経っても退院しなかった。 私は何度か見舞いに行ったが、ひとみは日に日にやつれていった。 原因不明の高熱が出たりして、病名はまったくわからないらしい。 軽い骨折で入院したにも関わらず、病状は思わしくなく、なかなか退院できなかった。 先輩は死ぬほど心配して、ほぼひとみにつきっきりだった。 私はその期におよんでも、ひとみに嫉妬していた。 ずるい、ずるい、ずるい。先輩を独り占めにするなんて。 先輩の心はもうひとみでいっぱい。 ようやく、ひとみが退院し、私達はまた元の学校生活に戻った。 だけどもう以前のように、一緒に学校に行ったりということは無くなった。 お互いが気まずく、ひとみとは徐々に疎遠になっていった。 そんなある日、駅のホームでひとみを見かけた。 ああ、同じ電車か・・・。 気付いていたけど、私は声をかけなかった。私、いやな女だ。 ひとみの後ろに、何か違和感を感じた。女が居る。 それは私だ。夢の中でみたもう一人の私。何故! もう一人の私はこちらを見てゆっくりと口を動かした。 「う・し・ろ・の・しょ・う・め・ん・・・・・・・」 私は次の行動が予測できた。 「ダメッ!!!」 私が叫んだのも空しく、もう一人の私は「だぁれ・・・・・」と言いながら、ひとみの背中を押した。 ちょうどホームに電車が入ってきた。 ひとみの体がスローモーションのように宙に浮き、あっと言う間に電車の急停止音と共に消えた。
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