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私の感じた「違和感」は彼の目にあった。 彼の目は、光を映さない。人間の目が光を映さないなどということは、物理的にあり得ない。だが、まるで、彼の瞳は暗い穴の中を覗いているような黒さ。人より瞳の色素が濃いのかもしれない。 家に帰るとやはり、私は、先輩のことばかり考えてしまう。 私は先輩に告白もできなかった意気地なし。ひとみは私が先輩を好きなことすら知らなかったのだから、ひとみには何の落ち度も無い。それなのに、わたしの聞き分けの無い心が騒ぐのだ。 私はその夜、枕を濡らした。 いつの間にか眠ってしまった私は夢を見た。 私は、まだ幼い子供で、かごめかごめをしている。 「かーごめ、かごめー。かーごのなーかのとーりーはー いーついーつでーやーるぅ」 周りの人の顔がぼんやりと見えてきた。 先輩?ひとみ? 「よーあーけーのばーんに、つーるとかーめがすーべった。 うしろのしょーめんだーあれ?」 「先輩?」 私が目を覆い隠した手を離して振り向くと、そこには私がいた。 「うしろのしょーめん、わーたし。」 もう一人の私がそう言うと不気味に笑った。 私はそこで目がさめた。 「ゆ、夢?」 そう言ったとたんに、体がずしりと重くなった。 金縛り! 私の上に何かがのしかかっている。 月明かりに照らされた顔は、私自身。 もう一人の私は、私に触ると、みかんの皮を剥くように、ペリペリと私の皮を剥きだした。 た、助けて!体が動かない。 私は、ベッドの上で血まみれの無惨な姿になった。 痛い、痛いよ!体中が痛い! 「いやあああああああああ!」 私は叫びながら目を覚ました。 全身から玉のような汗が噴出していた。 夢の中で悪夢を見るなんて。 外は明るくなり、朝を迎えたようだ。 ほとんど眠れなかった。だるいからだを起こし、仕方なく支度をし、学校へ向かった。 「おはよう。最近どうしたの?なんか元気ないね。」 後ろから、声をかけられ、振り向くとひとみが居た。 私は、先輩とひとみが付き合いだしてから、ひとみを避けていた。 平常心で居られない気がしたのだ。 「ううん、何でもないよ。」 私は作り笑いをした。 「おーい、ひとみー。」 後ろから、絶対に聞き間違えようのない声がした。先輩。 ひとみは、人前で、あからさまに先輩と腕を絡めた。
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