第1章

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“ねぇ、あたしのこと好き?嫌い?” そう言って彼女は笑顔でボクの顔をのぞきこんだ “どっちかというと・・・好き” ボクが答えると彼女はふくれっつらで言う “もぉ?・・・また、そんなこと言うんだから” そのまま、反対側をプイッとむいてしまった ボクは後ろからそっと抱きしめ “ごめん・・・でも、今は好き” と、つぶやいた “うん” 彼女も答え微笑んだ 僕たちが部屋を出ると朝日がまぶしくて 思わず同時に手を目元に光を遮った “ねぇ、朝ごはん何食べようかぁ” “牛丼” “いいねぇ?” 繋いでないほうの手で牛丼屋のドアを押し 繋いでいる手に力をこめ彼女をひいた “牛丼、大盛りで!” 二人の声が揃い早朝の店内に響く “ちょっとぉ、声大きいよぉ” “それは、おまえだろ” そして、また二人の笑い声が響く 店を出て駅に向かう 繋いだ右手に力がこもる 帰りたくない 帰したくない “じゃあね” そう言って彼女が切ない笑顔で手をゆるめた ダメだ!! 行くな!!!! “いたいよ” 彼女が顔を歪める 昨夜の彼女が思い出される・・・・ この手を離したくない!! ボクの右手がゆるめた彼女の左手に必死でしがみつく “ごめん・・・うそ” “えっ?” “大好き” 彼女の左手を引き寄せ力強く抱きしめた “うん・・・でも、ごめん” そう言って彼女はそっとボクから離れた “行かなくちゃ” そう言ってニッコリ微笑み駅へと走って行った ボクはクルリと向きを変え彼女と反対の方へ歩き出した “おはよぉ” 笑顔のカノジョがボクに近づき左手を握った “ねぇねぇ、昨日は何してたのぉ?” カノジョの問いかけにさっきまで感じていた 右手の温もりを思い出した “たいしたことしてないよ” ボクは左手にぐっと力をこめた すれ違った彼女が彼と右手を繋いでいるのが見えた 君の左側はボクの指定席
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