ばあちゃんの自転車

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 そう納得し、学校へ向かった。…そんなことをすっかり忘れた下校時。  一緒に帰る友達に、ひとしきり自虐ネタでばあちゃんの自転車を紹介し、やがて一人になった頃。  ふいに、バックミラーに何かが映り込んだ。  車じゃない。自転車でも、ましてや通行人でもない。そんな大きさでも形でもない何かがこっちへやって来る。はっきりと俺の方に突っ込んでくる。  振り向いて確認している暇はなく、俺は大慌てで自転車ごと脇へ避けた。  今まで俺が走っていた辺りを、ひゅんと、唸りを上げて何かが飛来していく。でも、パックミラーには映っていたのに、俺の目に、その何かの姿は映らなかった。  …何だったんだ、今のは。  暫くその場に立ち尽くし、辺りを窺ってみたけれど、もう、得体の知れない何かが飛んでくることはなく、俺は慌てて家へと帰った。 「おや、お帰り。自転車、直って戻って来てるよ」 「ありがと…は置いといて。あの、ばあちゃん。実はさっき…」  ばあちゃんなら、もしかしたら何か知ってるかもと、俺はさっきの体験を語った。それを聞き終わると同時に、ばあちゃんがにこりと笑う。 「バックミラー、役に立ったでしょ。昔はねぇ、気配で見もせず避けられたんだけど、歳を取ったせいか、確認しないと判らなくなっちゃってね。ホント、歳はとりたくな…あら、電話。はいはいはいはい。今出ますよ~」  会話途中で、かかってきた電話に向かってばあちゃんが駆け出す。おかげて俺は、肝心なことも聞けぬまま置いてけぼりだ。  ミラーが役に立っただろうって、焦点、そこじゃないだろ。何であの何かが見えたり現れたりする前提の話なんだよ。というか、昔は見えなくても避けられたって、ばあちゃん、いったいどれだけアレに遭遇してるんだ? いいやそもそも、朝の話じゃ『何が来てもかわせる』って言ってたな。ということは、アレじゃないのも来たりするのか?  生まれてからずっと一緒の家で暮らしてるけど、ばあちゃんて、いったい何者なんだ?  その答えは必ず後で聞くと心に決めて、俺は、今日一日世話になった、ばあちゃんの自転車を車庫の元の位置へとしまった。 ばあちゃんの自転車…完
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