ばあちゃんの自転車

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ばあちゃんの自転車

 学校に行こうとしたら、自転車がパンクしていることに気づいた。  自宅から学校まで、自転車なら十五分の距離だが、バスだと乗り継ぎの関係で一時間近くかかる。  今からじゃ、バスを使っても自転車を修理してからでも絶対に間に合わない。  帰りの手間や金銭的なことを考えても、こういう理由で遅れますと伝えて、修理をしてから行く方がいいだろう。  そう考え、学校に連絡をしようとした俺の背に、ばあちゃんが声をかけてきた。 「そいつは学校に行っている間に修理に出しておいてあげるから、今日は、ばあちゃんの自転車、乗って行きなさい」  ばあちゃんの自転車…というと、あの電動アシストの奴か。  正直、何がどうアシストになってるとか、使い方の詳細を知らないので、俺にとっては、小さ目のあげくにバッテリーのせいで重さが増した、乗りにくい自転車なんだけど…パンクが理由で遅刻するのもなんだし、貸してくれるというならそれでいいか。 「ありがと、ばあちゃん。じゃ、借りてくから」  礼を言うと、俺は車庫の奥の方に置かれているばあちゃんの自転車を引きずり出した。  うーん。やっばり小さくて乗り辛い。電動の仕掛けもむしろ邪魔。オマケにこれ、ばあちゃんが使いやすいように、手元に風防がついていたり、振り向かなくても後ろが見える工夫なのか、小さなバックミラーが取りつけられてたりと、なんというか…独特。  でも、ありがたいことに変わりはないので、早速学校へ向けて漕ぎ出した。  小さいせいで若干漕ぎにくいが、それでも自転車は自転車。そこまで違和感はない。風防とかバッテリーも今日一日のことと思えば我慢はできる。  あと、気になる部分というと、やっぱりこのミラーだな。  ハンドル右側の、ベルの隣に取りつけられたバックミラー。ばあちゃんの話じゃ、これがあると背後から何が来てもかわせるということだったが、そもそも『かわす』っていのうは何なんだろう。  後ろが見える=車や自転車、通行人の接近が見えるってことだろうから、ぶつけられる危険性が減るとか、そういうことかな。  まあ実際、ばあちゃん世代がゆっくり自転車を漕いでいるとして、その隣を、ぶつからなくても俺らくらいの速度の自転車が通過したら驚くだろうから、見えるってだけで安心。それが『かわす』って表現なんだろうな。
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