僕の家

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    僕の家は古い。そんな事ちっとも問題ではない。僕の家には笑顔がない。笑い声がない。それが大きな問題である。パパは働かない。酒ばかり飲んでいる。そんなパパは好きではありません。ママは一生懸命働いています。そして疲れ果てています。そんなママが僕も妹も大好きです。僕の家は写真館。もうすぐ店を閉めるそうです。僕は小学校四年生、妹は二年生。夏休みの絵日記に僕は天使の絵を描いて願い事を書いた。僕の願いはわが家の笑い声が聞きたい。パパとママの笑顔が見たい。天使さん、僕の願いを叶えて。僕の心からの願いを叶えて下さい!  子供の性格は親の愛情によって変わるのを知っていたので、天使はこんな形でマサトの願いを叶えた。  翌日は朝から大雨。マサトの家は古いから今まで幾度も雨漏れした。しかし今日のは格段に違う。天井が穴だらけみたいな雨漏れにママは悲しみに暮れた顔で、受け皿として使えそうな食器類をあるだけ並べた。マサトと妹のナツが手伝った。雨漏れはここかと思えばあそこ。あそこと思えばまた別。三人は黙って一生懸命受け皿を移動させたり、一杯になったらバケツにこぼした。雨漏れは続いた。何気なしにナツが言った。 「まるでメロディーみたい。ママ、私、立派な家より笑顔のある家がいい」  その一言は悲しみに暮れていたママの心に明かりを灯した。ママは小さな笑みを灯してナツを抱きしめた。 「ごめんねナツ、ごめん。ママ忙しくて気が付かなかった。ごめんね」  マサトはその光景が嬉しかった。立派な家より、笑顔や笑い声がなくてもママが大好き、それで十分だと思った。ママが大好き、そう思った時心が輝くのを感じた。彼は大きな夢を抱いた。 「ママ、僕、大きくなったら家買ってあげるよ」  ママは二人を抱きしめた。ママの目から涙が。しかし雨漏れで濡れたママの顔は、それが涙だとは思えなかった。パパはその光景に心打たれた。命の尊さと家族の大切さを感じた。今までの自分を心から詫びる思いだった。 「ママ、済まなかった。俺が悪かった。ごめん! これから頑張るよ」  ママは心から喜んだ。 「パパ、嬉しい! ありがとう!」  雨漏れの中、パパとママは子供たちを抱きしめた。マサトもナツも心から喜んだ。ママは子供たちを抱きしめたまま、
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