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高校卒業以来、久しぶりに俺と結衣は再開した。
結衣の部屋で。
「久しぶり!」
第一声は当たり前にする挨拶。
でも、俺には特別な言葉に感じた。
嬉しくて少し涙がこぼれそうになったがその思いは心にしまい平気なふりを装って。
「久しぶり。」
「まあ、玄関での立ち話もあれだからあがってよ。」
あの時からなにも変わらない調子の話し方で。
容姿は会うたびにかわいくなってるように感じた。
「そうだね、おじゃまします。」
「汚い部屋だけどあがってあがって。」
と結衣は言ったがめちゃくちゃ綺麗な部屋だった。
「急に誘ってごめんね。」
「全然大丈夫だよ。」
結衣はクッションが置いてあるところを指差しながら。
「えっと、ここに座って。」
と言った。
「ありがとう」
と一声掛けてから俺は腰をおろす。
「こうして迅と会うのは高校以来だっけ?」
先に話しかけたのは結衣からだった。
「うん、そうだね。」
過去の記憶をたどりながら返事をする。
「時間って、あっという間に過ぎていくね。」
「ほんと、早く感じるよ。
今、こうやって再び結衣と二人きりで話せるとは思ってもいなかったよ。」
「なにいってるの。
私たち幼なじみなんだから、いつでも話せるじゃん。
おかしな、迅。」
と少し笑いながら言った。
「うん、そうだよね。」
と俺も笑いながら返したが、心の中では違うことを考えていた。
今日この日を待ちに待っていたのはほかの誰でもない俺だった。
あの日あの時あの場所で言えなかった言葉を口にするために。
ただ、結衣が好きだって。
好きなものを好きって言うだけのこと。
チャンスは今日しかない。
そんな風に迅が考えている間にも結衣は話し続けていたがほとんど耳に入ってこなかった。
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