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阿鼻叫喚の中列車を降り、フレイとクリスは遙か頭上を見上げた。マナを列車に送る高架線の先に巨大な影がみえた。かんかん照りの青空の先に見える工事現場は、ブレンの郊外に建設されつつある高層ビル群だ。
その高層ビルを巨大な影が、その大きな前足を振り上げ、勢いよく振り下ろした。
ガシャンがシャンと騒々しい音を立てながら建材が砂埃をあげながら落ちてくる。慌てふためき工事現場から作業員たちが逃げ出す。
「……犬ですね」
「……犬だな」
二人の視線の先で巨大な犬が「わん」と吠え、その太い尾をぶんぶんと振った。
「アレンのおっさんの報告書に書いてあった『異常』ってのは、あれだよなあ」
首を傾げながら、フレイは運ばれてきたアイスコーヒーにシロップをだばだばと注いだ。
「まああれでしょうね。犬種は何かな」
クリスがそういいながらメニューをぱらぱらとめくる。
駅前のダイニングカフェは、砂埃から身を守ろうと駆け込んできた人々でごった返していた。
どこもかしこも先ほどの犬の話題で持ちきりだ。二人の隣のテーブルでも、建築作業員らしい服装の男たちが「またでたよ、いい加減にしてくんねぇかな」とごちている。
「犬種はあれだよ。あれ作ってる奴のもってる犬のイメージだよ。たれ耳のいかにも忠犬って感じなんだろ。俺は耳たってる方が好きなんだけどな。かっこよくて」
「俺はすらっとしてるのが好きですねえ。大型の軍用犬っぽいの。あ、お姉さん、このパスタください。ルッコラ抜きで」
「てか、なんで飯くいだすんだよ」
流れるように昼食を注文しだすクリスに、フレイは思わず突っ込みを入れた。
確かに時刻は昼時で、カフェ内は食欲をそそる香りで満ちているが、そもそも、だ。
「お前何しにきたの? まさか、俺の尻追いかけてきた訳じゃないよな」
「あ、はい。フレイさんの尻も追いかけているんですけどね」
「・・・・・・そこは否定して欲しかった」
「ここで仕事の待ち合わせをしてまして。いや、尻を追う追わないの前に、一応俺も仕事でこの街きたんですよ」
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