モトとラギ

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少女は、ふと気が付いた。 くっきりと開いた大きな瞳。黒く長くそよ風に優しくなびく艶やかな髪。頬は赤らめいて、瑞々しい唇は太く桃色。透き通る様な白い肌は、青く、か細い血管をうっすらと浮かび上がらせている。着衣は無く、茫然自失とただ、立ち尽くしていた。 何もかもが浄化されたかの様な一面の黒。上も下も右も左も、あらゆる景色が黒。 その空間に、只1人ポツンと立ち尽くす少女がいた。 少女の長い睫毛がゆっくりと上下すると、瞼が開く次の瞬間に驚く速さで辺りの景色が彩り豊なマーブルカラーに変化を起こし始める。 辺りを見回す少女、次々と変わる景色。大地は緑に染まり草木が急激に生い茂る。天は、1つずつ星の数を増やして行き、物凄い速さで朝と夜とを繰り返して行く。 驚きを隠せない少女は、立ち尽くしたままではいられなかった。 少女は不意に、持てうる力、全身全霊で走り出した。 次第に、表情が険しくなる少女。ゆっくりとお腹が膨らみ出す。すると、次第に走る速度も落ち込んで行った。 徐々に膨らんで行くお腹を擦りながら、少女は時折り笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み続けていた。 何百、何千と夜空に浮かぶ星空が輝き出し、枯れては咲き乱れ、成長と衰退を繰り返しながら最終的な形状を手に入れ始めた緑。 辺りの景色が落ち着きを見せ始めた頃、苦悶の表情でゆっくりと地を這う少女の姿があった。 額には大粒の汗、過剰に切れる吐息。左手でしっかりとお腹を庇い、右肘でゆっくりと体を起こしなが地を少しずつ這う少女。 雲が急加速で天をグルグルと過ぎ、暖かい日射しが少女を照らしたと思えば一瞬の豪雨と豪雪が繰り返されていた。 次の瞬間、遂に少女は歩みを止めた。両腕でお腹を庇い、丸くうずくまって見せた。すると、辺りの景色は少女が歩みを止めたままの状態で変化を止めた。 少女の顔だけが天を仰ぐと、その瞬間、少女の体が無数の水滴へと姿を変え、至るところへと弾け飛んだ。 その少女の体があった中心には、非常に整った目鼻立ちをした二人の赤ん坊がすやすやと眠っていた。 男の子と女の子の赤ん坊は、どことなく先程の弾け飛んだ少女に容姿が似ていた。 ゆっくりと生い茂る木々の枝が彼等の前へと下りて行く。 そっと、傷付かぬ様、ゆっくりと木々の幹が彼等を抱き上げると、隣の大木から生え伸びる枝へと受け渡した。
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