モトとラギ

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次々と双子の赤ん坊が枝から枝へと木々の間を受け渡される。 すると天が動きを取り戻し、草木がざわめき立った。 湿った風と乾いた風、稲光と地鳴り、夜と朝が交互に、無数に繰り返されていた。 いつの間にか、双子の赤ん坊は少年と少女の形を手に入れ、自分たちの足で黒しか無かったこの空間をひた走っていた。 地は虫が這い、水面には魚影、草花の回りにはカラフルな色彩の小動物。 木々の生い茂る中には、鋭い牙を見せる猛獣同士の戦闘や、食物連鎖のサイクルが何度となく繰り返され始めた。 双子の少年と少女は、いつしか美しくたくましい青年と美しく見とれてしまうほどの女性の容姿になっていた。 二人は手をつなぎ、緑生い茂る森の中を散策したり、草花に囲まれながら、小動物達と戯れたりと笑顔の絶えぬ様子。 ふと、天を仰ぐ二人。そこには、雲の合間から光るあの少女の姿が映し出されていた。天に浮かぶ映し出された少女は、優しい笑みを二人に見せた。二人も天の少女に微笑み返している。 その好景を、木陰から覗く醜い少女の姿があった。 天に映し出される少女は、1本の大木を指差し険しい表情を見せた。すると二人の表情も険しい物へと変わり、握りしめる手と手は互いに強さを増した。 また何度となく天が動き暖かい風と冷たい風が入れ替わり、新しい種類の花が咲き乱れ、星の数が数え切れなくなり、見たことも無い大型な動物が地を這い始めた頃、醜い少女が二人の前に表れた。 醜い少女は、1本の大木を指差しながら笑みを浮かべていた。 首を横に振る青年。しかし女性は青年の手を離し、醜い少女の手を握った。 青年は、悲しそうな表情で、艶やかな成長を果たした女性の後ろ姿を眺めたまま立ち尽くしていた。 醜い少女と二人、1本の大木の前。醜い少女は、含み笑いを堪えながら大木の上を指差した。そこには、真っ赤に染まる果実が1つ生っていた。 青年は、天を仰ぎ光り輝く少女に向けて何かを叫んでいる。天に映し出された少女は、驚いた表情を直ぐ様に険しくさせた。 物凄い轟音と共に1本の大木に雷光が落ちた。醜い少女は黒焦げになり墨と化した。側にはかじった後のある真っ赤な果実が1つ、転がっていた。
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