モトとラギ

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青年が、二つに割れた大木の前まで来ると、艶やかに成長した女性は、頬を赤らめて胸と局部を手で隠しながら、しゃがみこんでいた。 青年は、首を傾げながら女性を眺めている。ふと、天から覗く少女は、輝きを失い始める。泣き叫びながら、徐々におぼろ気になる少女の姿が、次の瞬間、1つの点に吸い込まれる様にして消えてしまった。 ふと、背中に柔らかい膨らみを感じた青年は、それが艶やかに成長した女性の物だと直ぐに理解した。 青年は女性の方へと振り返ると、妖艶な表情を浮かべながらゆっくりと顔を近付けた。 女性は、青年の唇に自分の唇を重ねた。青年のたくましい体に衝撃が走り抜けるのを感じ取ると、女性は不適な笑みを浮かべながら、天に向け顔を上げた。 そして、天はまた無数に動き出した。 幾つかの絶滅と新しい種の誕生を繰り返し、辺りの景色が落ち着き始めた頃、双子の子孫達が野山を駆け巡っている好景があった。 世界の創世から、数え切れない程の夜を超えたある朝、双子の子孫達の中から新しい子孫が産声を上げた。 無数のテントが並ぶ集落、数頭の馬が太い木の杭に縄で繋がれていた。 大地は生い茂り、朝露が葉の先へと滴り雫として落ちようとしている瞬間であった。 優しい朝日の中、元気良く泣き叫ぶ赤子。 「オギャア、オギャア、オギャア」 赤子の泣き叫ぶ声が漏れるテントの中、麻と布で体を覆う大男が赤子を抱き上げていた。 「ガハハハ、男だ!男の子だ!俺の子だ!」 大男は、鼻っ面を真っ赤に染め、熱くなった目頭に涙を浮かべながら叫んでいた。 その脇、持てる力を精一杯出しきったのか、憔悴しきった女性がその姿を涙を浮かべながら見つめていた。 「モト、私にも抱かせて」 弱りきったか細い声、しかしモトと呼ばれたこの大きな男はそれを聞き逃していなかった。 「ラギ、良く頑張ったな!」 モトは、ラギの肩を抱き寄せ、二人で元気に泣き叫ぶ赤子の顔を見つめていた。
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