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目の前に広がるのは、断崖絶壁。その先には、終わりが見えない大森林。1つ1つが密集しあい、木々が地平線まで広がっているかの景色。
モトは、眼を見開き、その景観を眺めながら立ち尽くしていた。
抱えていた赤子は木陰に隠し、馬に跨がる男達が来るのを待っていた。
「う、うう、ラギ、俺にはわがる。殺されちまっだんだな、ラギ」
肩を震わせ、涙が溢れかえるモト。その瞬間、ザッと大地を蹴る音がした。モトの後ろには、馬に跨がる無数の男達が立ちはだかっていた。
モトは、天を仰いだ。
「ムスビの女神様、何でラギを助げでくんながった」
その瞬間、天の合間から少女の姿が表れた。が、モトは既に男達の方へと体の向きを変え、物凄い表情で睨み付けていた。
「俺の集落を、ラギを返せっ!」
その瞬間、モトは勢い良く馬の首元に飛び込んだ。1人の男が、モトの肩に槍の先端を突き刺す。しかし、モトは怯まない、そのまま馬ごと持ち上げて男共々崖下に投げ捨てた。
「ざあ、来い、ラギの敵だ」
モトは、右肩に刺さった槍を、表情を一切変えずに無粋に抜き取り、それを両手に身構えた。
馬に跨がる男達が、一瞬怯んだ瞬間であった。
モトは一番手前の男に突進。その男の喉元に槍を突き刺した。男は、馬から転げ落ち、絶命。馬は前足を上げ興奮した様子で暴れ出す。
直ぐ様剣を身構え、モトの背中を切りつけた男、それに追随し、モトの正面から槍を突き刺そうとする男、しかし、モトはその槍を自分の体ギリギリの所でガッシリと掴んだ。
「うらあああ!」
モトは、そのまま槍を押し込み、柄の部分で男を突き刺して、そのまま谷底へ放り投げた。
馬に跨がる男は、残り二人。
モトの怪力に男達はたじろんだ。ゆっくりとモトは男達の、方へと足を運んで行く。男の1人は、馬から降り剣を取り出した。もう片方は、鎖付きのトゲが無数に散りばめられた鉄球を、馬上から振り回す。
剣を持つ男が、モトの右脇に駆け抜けると同時に馬上からトゲ鉄球がモトを目掛けて飛んで来た。
モトはトゲ鉄球を間一髪の所でかわしたが、次の瞬間に、左脇腹を剣で大きく斬り込まれてしまった。
右肩から、背中から、左脇腹から溢れかえる出血にも表情を一切変えないモト、それはまさしく鬼の形相であった。
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