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銀色の長い髪の女性は、決して声を発する事は無かった。また、人目を避けた。
サカサは、少年へと成長し逞しく野山を駆け回っていた。
銀色の女性は、表情も変わる事は無かった。
サカサには、頷きと首を横に振る方法だけで大地の土に文字を書き、発音を教えていた。
この頃になると、サカサは動物達に言葉で接する様になっていた。
無花果の生い茂る木の下、オオカミとリス、猿とヤギに、囲まれながら、木の枝で大地に文字を書きながら、動物達に言葉を教えていた。
[なあ、サカサ、俺達には無理なんじゃないかな?]
オオカミがサカサに話し掛ける。その声はガウガウと言った犬課の声。
「いや、やってみないとわからないよ!」
キキッキキーッ!
[サカサと、俺達の体の造りって違うじゃないか。きっと、無理だよ!そもそも、僕達は他の人間と会話出来なくても別に構わないんだよ、サカサとは会話が出来ているじゃないか!]
猿がサカサを諭す様な仕草。
メエー、メエー。
[そもそも、君の母さんも喋れないだろ?サカサだけが特別な存在なんじゃないか?他の人間なんて、僕達は見たことも無いんだよ]
ヤギの言葉に、サカサは少し腹が立ったのか不意に立ち上がった。口は尖らせている。
「なんだよ!皆とこういう風に会話したいだけなのにっ!!もーいーよ!」
サカサは走り出し、オオカミとリス、猿とヤギの元を後にした。
[あ、サカサ!待って!]
リスがその後を追い掛けた。
「なんだよ!着いてくんなよ!」
[ねえ、皆も悪気があった訳じゃないよ!本当はね、サカサのお母さんに聞いたんだ、僕達]
ピタッと、サカサは足を止めた。スッと、振り返りリスを抱き上げた。
「母さんが、無理だって言ったの?」
[う、うん。でも、皆、サカサが一生懸命だから、中々言い出せなかったんだよ。]
「う、うう、そうか。やっぱり、俺だけ母さんとも違うのか。」
肩を落とすサカサ。スッと、リスがサカサの肩に場所を移した。
「サカサは、違うんじゃなくて、特別だっておばさん言っていたよ!」
「な、特別ってなんだよ!」
[さあ、それは僕にもわからないよ!一緒におばさんに聞いてみようよ!僕も気になってたんだ]
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