第一章 教科書はどこにある

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 その時、一つの考えが菜津美の頭に浮かびました。そして、その言葉を裕也にぶつける形で聞いてみたのです。 「先生には、その事、話したの?」  裕也は先生に何度も話した事を、菜津美に教えてくれました。 「でも、まるきり駄目だった。僕の事よりも、ほかの事を優先にしていたから」  自分ばかりを構っている余裕など、先生にはなかったと、裕也は笑って話してくれました。しかし、裕也の顔を見る限りでは、その笑顔は、引きつっているようにしか見えません。まるで、笑顔の中に、悲しみを隠しているような、そんな感じもしてくるのです。  それを見た菜津美は、意を決したように、その依頼を引き受ける事に決めたのでした。 「力になれないかもしれないけど、犯人は絶対に挙げてみせるから、大船に乗った気持ちでいてね」
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