第一章 教科書はどこにある

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 嫌みたらしい口調で言う妹を見て、兄の正志は深く反省しました。自ら犯した罪が、菜津美を悲しい気持ちにさせるなんてと思うと、心が痛むのです。  菜津美も同じ気持ちを抱いたようで、ついには、正志に気持ちの面で負けた気さえしてきました。 「わかった。この謎、私が解いてみせるわ。駄目な兄のためにも、ひとはだ脱いでやろうじゃないの」  正志の勢いに根負けした菜津美は、とりあえず、事件の被害者、瀬戸裕也に話を聞くことにしました。     三  「その日僕は、国語の授業があったから、学校に教科書を持ってきてたんだ」  ランドセルの中に入れてと、裕也は強調して言いました。
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