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「大森先輩!」
俺が道場に戻ろうとすると、まだ名前の覚えていない女子が声をかけてきた。
大森先輩か…
「キヨでいいよ。俺みんなにキヨって呼ばれてるし。」
「あ、じゃあ、キヨ先輩。」
んん?顔赤い?
「あの、キヨ先輩のゴム弓、いただくことはできませんか?」
その子は、思い切ったようにそう言った。
「え?俺の?」
その子が頷いた。
うーん…別に構わないけど…
名前も知らないうちに、すげーな…
とはいえ、個人的に直接交渉って言ったのは俺だしな。
「うん。いいよ。わかった。じゃ、今度、持ってくるね。」
そう答えると、嬉しそうにお礼を言いながら、その子が帰っていった。
「おーい、モテ男ー。早速、後輩にもててんのー??」
アツヤが茶化しにやってきたから、
「そんなんじゃねーって!」
と小突きながら道場に帰った。
その後ろで、春大が、何かを考えるように、俺たちのことを見つめていることなんて、一切気付かなかった。
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