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やはりと言うかなんというか、今年の弓道部に入部する女子は多かったようだ。
俺が目当てのヤツもいるだろう。
でも、やっぱり、その人目当てのヤツもいた。
その中でも、アキって女は、中々したたかで、早速、その人の使っていたゴム弓をもらう約束を取り付けていた。
なんだろう、俺には何にも関係ないはずだ。
それなのに、やけに、イライラする。
アキごときの女が、あの人の使っていたものを使っていいわけがない。
あの美しい引き方を生み出した道具を、こんな女に持たせても、宝の持ち腐れになる。
そんな風に思っている自分に衝撃を受けつつ、何としても、あの人のゴム弓を自分のものにしよう、と、知恵を働かせた。
俺は、その日のうちに自分でゴム弓を購入した。
そして、その人からゴム弓を受け取り、そのゴム弓に近い状態に俺のゴム弓を細工した。
そして、アキには、俺が買ったゴム弓の方を渡した。
アキは嬉しそうに俺の買ったゴム弓をあの人のものだと勘違いしたまま受け取った。
その日から、俺はあの人のゴム弓で練習を始めた。
アキもあの人も、その事実には気づいていない。
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