125人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は起き上がった上半身を左右に揺らし、周りを見渡す。やはり見覚えのある場所ではなかったが、その風景の中には声の主である少年の姿を見つける。
「ん?誰だお前は!?」
おそらく俺にずっと呼びかけて来たのは、この子供だろう。その子供の正体を気にしながらも、再びテントを舐めるように見渡す。
雨を弾きそうな材質のテントは、派手な黄色。地面には1日2日ぐらいは生活できそうな必要物資が乱雑に置かれている。
俺が不思議そうにテントの中を観察していると、小さな子供は俺に対しワザとらしくため息をついた。と同時にイラつきを含んだような声を出す。
「誰だとはなんだ!俺はお前が砂漠のど真ん中で倒れてたからわざわざここまで運んできてやったんだぞ!?」
少年は早口で俺を怒鳴る。少年は突然怒鳴りだしたが頭のさえない俺は怒鳴られている理由がわからない。
とりあえず俺は少年の姿をまじまじと観察した。
推定10歳ぐらいの小柄の男の子。
頭には紫色のターバンを巻いており、それと合わせるようにどこかの民族衣装のようなものを着込んでいる。
俺は少年の正体と並行し、必死に状況を理解しようとするが全くそれができない。
少ないヒントの中、少年が言っていたある言葉を思い出す。
「砂漠?……鳥取砂丘のことか?」
頭は冴えないが、【砂漠】というあまり日常生活で聞き慣れない言葉をしっかりと記憶していた。
しかし子供は、ただ不思議そうな顔をして見せる。その顔はとても冗談で作っているとは思えないほど真剣だ。
最初のコメントを投稿しよう!