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そして今、放課後の写真部の部室には、そんな絵美と結々の二人だけしかいない。
「ね、そういえばまだ聞いてなかったけど、なんて言って告白したのよ」
「いや、まあ普通に……ずっと好きでした、つきあってくださいって」
へえ、と絵美が楽しそうにニヤニヤと笑いだす。
「じゃあ、初キスは? いつだったの?」
まくし立てるように言って身を乗り出す絵美から目をそらして、結々はごにょごにょと小声で答えた。
「いや、キスとかは、まだ……もういいじゃん、そんなの」
「あ、そうなの」
絵美はさっきまでの勢いをなくして、椅子の背もたれに体を預けた。
「そっかそっかー、うぶなお二人さんだったか。でもいいじゃない、すぐに手を出さないって、なんか、大事にされてる証拠で」
「大事に……」
結々は呟いて自分の手元に視線を落とす。葵は自分を、大事に想っているのだろうか。もちろん、邪険に扱われていると感じたことなどはないが、絵美の言葉はなぜかしっくりこない。今までのデートを思い返してみても、彼の優しさはどこか男性が女性を礼儀としてエスコートしている、というような感じで、その優しさの根底にある部分が世間一般でいう恋とはどこか違うように思えてしまう。手を繋がないのもキスをしないのも、大事だからというよりは……
「結々?」
突然うつむいて黙り込んでしまった結々に、絵美が顔をのぞき込むようにして声をかける。はっと顔を上げるのを見て絵美は少し申し訳なさそうな表情をした。
「ごめん、ちょっと詮索しすぎたね。でも大丈夫よ。そういうタイミングは、人それぞれなんだから、あんたはあんたのペースでやれば」
「うん。……ううん、そうじゃなくて……」
結々はぬるくなったカフェオレに口をつける。砂糖とミルクの甘みのあとに、昨日と同じ苦さが残った。
「なんか、藤宮先輩は私のこと別にどうでもいいというか、好きじゃないんじゃないかなって、思っちゃって」
ぽつんと落とされた呟きに、絵美は驚いてこちらを見返す。
「え?」
「なんか私ばっかり好きで、片想いの時とあまり変わらないというか……藤宮先輩は、まだ私に心を開いてくれていないような感じで」
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