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カツン、とスコップの先に何かが当たる音がした。慎重にそのまま掘り進めると、土と土の間に何か光る物が見える。周りの土をどけて取り出してみると、それは土に汚れて古くなったクッキーの缶だった。蓋が外れるのを防ぐために貼られたのか、黄色く変色したセロハンテープがびろんと垂れ下がっている。
葵はそれを外してしまうと、決意するように深呼吸をして蓋を開けた。それから中に入った二つの封筒の、可愛らしい絵柄の方を手に取って眺める。表には『未来のあおいへ』と幼い文字で書いてあった。
丁寧にのり付けをはがし、おそるおそる便箋を開いた葵は、書いてあったその内容に動きを止めた。小さく息を吸い込んで、食い入るように手元を見つめている。
キン、と冷たい空気の膜を通った冬の光が、儚いきらめきだけを残して地面に降り注がれる。
しばらくそのまま黙っていた葵だったが、は、吐息を漏らすと口角を上げた。
「……ばかだなあ」
けれど笑みの形にした唇がだんだん解けて歪むと、やがてくしゃりと泣き顔になった。
「なんだよこれ……」
結々はそっと窺うように手紙を見る。そこには大きく、
『大好きなあおいへ。ずっとずっといっしょにいようね』
と書かれてあった。
「晴那……」
葵はかすれた声でそう呟くと、そのまま握りしめた便箋に顔をうずめてしまう。肩を震わせ、抑えきれない声を漏らす葵の姿に、結々の頬にも涙が伝う。それでもたまらず葵の正面にまわると、地面に膝をついて――葵を抱きしめた。
葵は一瞬体をこわばらせたが、すぐにその力を抜いてされるがままに体を預ける。二人は何も言わず、ただ自分の中にある気持ちを分かち合うように身を寄せ合っていたが、やがて結々は一言一言たどたどしく言葉を紡いだ。
「先輩。私、先輩のことが好きです。ずっとずっと、大好きでした」
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