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徐々に列は進み、サインをして貰った人々が大喜びしながら列から外れていく。
その大半が女性であり、ソウカが並ぶ役割で良かったと内心安心していた。
10分程して、ようやくソウカの番が回ってくる。
本を握りしめ、目の前に相対する。
なかなか本を出さないソウカに対して、カズマが首をかしげつつ手を差し出した。
「サイン、いらないの?」
「あっ、いや……」
慌ててページを開き、カズマに差し出す。
そこまで笑顔だったカズマの顔が、そのページを見て一気に曇る。
メッセージを仕込んでいたページに、明らかに目を奪われている様子だった。
暫く沈黙が続き、周囲のスタッフが心配の面持ちで近寄ってきた。
今この本の文章を見られるのはマズイ。
ソウカが慌てて本を奪い取ろうとしたが、その前にカズマが手に持っていた本を勢いよく閉じる。
その顔にまた笑顔が戻り、本をソウカに返した。
「理解したよ」
それが答えなのか、それ以上の言葉は残さなかった。
本を受けとり、ソウカは足早にサイン会の会場を後にする。
少し離れた所で待機していたコウタ達は、こちらに歩いてくる姿を目視する。
だがそこで話かけはせず、ミスズと共にリンネ達の待つ合流場所へまずは移動した。
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