第二話 奪われた声

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あの事件から数日、初夏の季節になった。 梅雨の時期に入り、じめじめした空気に気持ちがどんよりする。 コウタもまた、梅雨の時期が嫌いだった。 ただ雨が嫌い、という訳では無い。 「今日も雨だな、コウタ」 コウタの前の席から飛んできた声に、思わず目を向ける。 前の席には、少し長めの黒髪を後ろで結った少年が座っていた。 背もたれの部分に腕を乗せ、少し気怠そうにコウタへと顔を向ける。 「何だ、アキヒコか」 「何だとは何だ!?俺達親友だろ!?」 「そうだな、部活では良いパートナーだ」 席の隣にかけられた鞄を見る。 開いた鞄の隙間から見えるラケットが、さらに気持ちを沈めた。 コウタは、テニス部に所属している。 運動はそこまで得意じゃなかったのだが、目の前にいる親友の(ひいらぎ)アキヒコが誘ったのをキッカケにテニスを始めた。 今では趣味程度だが、楽しんで部活に打ち込んでいる。 しかし連日の雨が、部活の時間を潰したのだ。 だから、梅雨の時期が一番嫌いだった。
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