第二話 奪われた声

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「雨といったら、こんな話前に聞いたんだけど……」 背もたれに乗せた腕に顎を置き、アキヒコはにこやかに話を始める。 それは、学校内で一部に広まる噂話だった。 「うちのクラスに、広居(ひろい)ミスズっているだろ?」 指さす先は、コウタと同じ一番後ろの席の丁度反対側。 窓側のコウタとは反対の、入り口側に座る少女。 長い黒髪に、赤いリボンが特徴的な彼女が広居ミスズだった。 クラスのマドンナ的存在として、みんなに好かれていた。 だがある雨の日を境に、彼女は一切喋らなくなる。 喋りたくても、喋られない。 ミスズが綴ったノートには、そう書かれていた。 「広居がどうかしたか?」 「広居さんって、声を奪われたんじゃないかって噂があるんだよ」 「声を?誰にどうやって?」 「雨の日の河川敷で彼女を見たって人から聞いたんだけど、フラフラとした足取りで誰かと歩いていたらしいんだ。それ以上は、俺も知らない」 ピクリと、耳が反応する。 声を奪われた少女。 奪った犯人だと思わしき誰か。 あまりにも非現実的だからこそ、今教室にいないソウカの顔が嫌でも浮かんだ。
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