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放課後の図書室。
普段なら立ち寄る事の無い場所に、コウタはいた。
純粋に本を読むためではなく、本を読みに来た少女に会うためだった。
「君から会いに来るとは、珍しいなコウタ」
「うるせー、別にクラスメイトなんだからいいだろ」
足を組んで本を読むソウカが、そこに居た。
相変わらず前髪で片目を隠しているが、慣れとは怖いもので奇妙だとは思わなくなる。
パタリと閉じられた本は、人魚姫と題された童話だった。
思わず表紙に目をやると、ソウカは小さく微笑む。
「人間になる代わりに、声を失う。挙句の果てに王子を殺せず、泡となって消える」
「な、何だよそれが」
「コウタは、ミスズの事で僕の所にきた訳じゃないのか?」
うわずって吐きだされそうになった言葉を呑みこみ、その代わり大きく目を見開いた。
何でもお見通しと見つめるソウカの目が、怪しく光る。
またも根負けしたコウタは、両手をあげて降参のポーズを取った。
ふふんと鼻を鳴らす姿に、カチンと頭にくる。
「ミスズの事が好きなのか?」
「はぁ!?」
本のページをまためくりながら、コウタに問いかけた。
思わぬ質問に、いつもより大げさに首を大きく横に振る。
あからさまに否定する様子を、楽しむかの様にソウカは笑った。
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