51人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、昼休み。
ミスズは決まって昼休みは、屋上にいる。
まるで逃げ込むかの様に、いつもそこにいた。
屋上で食事をとるミスズの横に、コウタは座った。
彼女は目を見開き、驚きの顔で硬直してしまう。
だがコウタが笑顔で一緒に持ってきた弁当を指さすと、ミスズは微笑んで弁当の箸を進めた。
「教室で、食べないのか?」
コウタが問いかけると、ミスズは箸を止め紙とペンを手に持った。
サラサラと慣れた手つきで書かれた言葉は
『今は、1人の方が気が楽だから』
悲し気な顔で、嘘だとバレバレだった。
だがコウタはそれ以上何も言わず、再び箸を進める。
しばらくは無言で食べていたのだが、食べ終わったミスズが何かを書きだした。
渡された紙を受け取り、まじまじと見つめる。
「どうして一緒にいるの?って……それは……」
紙を折りたたんで、コウタは小さく微笑んだ。
「たぶんなんだけど、声を取り戻せるかもしれない」
その言葉と同時に向けられた、期待の眼差し。
助けてもらえるかもしれないという期待に、今ならば応えられる気がした。
失った声を取り戻したいという、その希望に。
「良かったら、俺と一緒に来てくれないか?」
昼休みの終わりを告げる鐘が聞こえると同時に、ミスズは小さく頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!