第二話 奪われた声

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その瞬間、聞き慣れた声が屋上に響いた。 「蒼樹さん!!赤羽くん!!」 入り口から手を振り声をかけたのは、ミスズだった。 ソウカの姿を見掛け、ここまで追いかけてきたという。 息を荒げながらも、彼女の顔は満面の笑みだった。 「どうしたんだ?もうお礼は済んだだろ」 「ええ。だけど、お2人にお願いがあって……」 お願いと言われ、ソウカは首を傾げる。 コウタもまた、肩をすくめていた。 大きく深呼吸したかと思えば、ミスズは勢いよく頭を下げる。 「私も、蒼樹さんのお手伝いをさせてください!!」 全くの予想範囲外な出来事に、開いた口が塞がらないコウタ。 だが対するソウカは、驚きながらも小さく笑っていた。 「ど、どうしてなんだよ急に……」 「ちょっと、オカルトごとに興味を持ちまして。蒼樹さんの近くにいれば、そういったものを沢山見れるのではないのかと思いました」 彼女は想像以上に、胆が据わっていた。 大人し気な表情の人程、本性は全く読めない。 ソウカは神経を擽られた感覚に、悦の気分へと浸る。 「第2の助手として、よろしく頼むぞ。広居ミスズ」 「……はい!!」 こうしてコウタの頭が理解する前に、新たな助手が誕生した。 空は雨を忘れ、明るい青空が広がる。 その下で3人は、互いに笑顔を零し合った。 「ところでさ、ソウカ」 「何だ?コウタ」 「さっき何か言いかけたんじゃないか?」 「それは、また今度にしよう。いつか話すよ……」 ―――――――僕が何故、こんな事をしているのかをね。
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