第三話 鐘の音と消える人々

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季節は、夏を迎えた。 うるさく鳴くセミの声に耳を傾けながら、コウタは授業を聞いていた。 夏休みまであと1週間に迫り、部活動であるテニスも大会を控えている。 そんな中、コウタはある違和感に気持ちを占拠されていた。 あれだけ関わってきたソウカが、ミスズの事件を境にコウタに一切接触しなくなる。 何かしたという訳でも、怒らせたわけでもない。 突然彼女は、クラス以外で姿を現さなくなった。 コウタはそれが、逆にモヤモヤして気持ちが悪い。 うだる暑さよりも、頭の中はその事でいっぱいだった。 ミスズはどうやらソウカと共に行動しているようだが、聞いても何も教えてくれない。 避けられているのが丸わかりで、今までに抱かなかった感情にイライラする。 嫌いだった奴が離れたんだから、いいじゃないか。 そう思っていたはずなのに、学校の件で共に協力したりミスズの件で助けに向かったりと自身でも今の感情が変な事に気付いていた。 授業終了のチャイム。 終わったと同時に、ソウカは教室から出ていった。 続けてミスズも外に出ようとしたのを、コウタは引き止める。 「悪い、ちょっといいか?」 ミスズは、少し困惑していた。
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