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呼吸に交じり、小さな吐息が聞こえた。
「ん……」
それは、コウタの声だった。
「こ、コウタ!!」
驚きのあまり、2人はコウタの元へ駆け寄る。
待ちかねていた目覚め。
ソウカもミスズも、互いに顔を見合わせ喜んだ。
「良かったです!!目を覚まさないって聞いた時、私で本気で焦って……」
「いろいろ僕も言いたいことはあるが、一先ずお礼を言わなければな」
にこやかで喋りかける2人に対し、コウタは何度も瞬きをしていた。
「どうした?コウタ」
「……ごめんなさい、誰、ですか?」
笑顔だった2人の顔が、一気に凍り付く。
だがその状況を上手く呑み込めていないコウタは、真っ直ぐソウカの方を見つめた。
「赤羽くん、もしかして……」
「あれだけの衝撃が頭にきたんだ。何もないはずがなかった……」
コウタの中の記憶は、一部だけ欠損するという異常な事態が起きていた。
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