第四話 失われた光と記憶

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広がる青空、彼方まで広がる海。 今この季節は、この場所が最高だった。 学生たちは、一ヶ月という長い休みを満喫する。 宿題という地獄も待っているが、それはここに遊びにくる人達には関係ない。 今は、遊びの時間だ。 「コウタ、あまり無理しないようにね」 砂浜に1人座り込むコウタは、母の言葉に耳を傾ける。 ゆっくり振り返り、小さく笑った。 「そうだね、母さん」 立ち上がり、砂を払って母の元へと歩き出す。 コウタの記憶は、まだ戻らない。 退院して暫く経つが、ソウカとミスズの事はクラスメイトだったという事までしか思い出せずにいる。 深夜の学校でソウカと脱出したことや、廃屋でミスズの声を取り戻すために奮闘したこと。 そして自身の父だったダイキとの再会すら、覚えてはいなかった。 少し心の中で違和感を覚えながら、日々を生きている。 逆に思い出さない方が、幸せなのかもしれない。 木陰で覗いていたソウカは、どこか寂しそうにコウタを見つめていた。
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